こんにちは。社会保険労務士の北村恭子です。 障害年金は年金事務所に必要書類の提出をして、審査を待ち受給決定になります。 事前の準備から始まり書類の用意をし、年金事務所に提出し、受給決定され振り込まれるまで順調にいっても約6~9か月かかります。 事前準備、書類の用意に約2~3か月、書類の提出後受給決定までに約3か月、そして決定から約50日で振込です。 障害年金は提出する書類が全てで、事前の準備から気を抜けません。 順を追って確認していきましょう。
目次
障害年金の請求までの流れ
障害年金は一発勝負と言われていて、最初の請求(年金事務所に提出する書類)が非常に大事です。
障害年金は最初に不支給の判定が出ますと、審査請求、再審査請求に進みますが、不支給を覆して支給決定にもっていくのは大変難しいです。
ですので、入念に準備をし最初の請求をしましょう。
障害年金を請求するまでの全体的な大きな流れを把握しましょう。
①事前準備
⇓ 1,病歴・治療歴の整理
⇓ 2,初診日の確認
⇓ 3,医師への相談
②年金事務所に相談
⇓ 1,納付要件の確認
⇓ 2,必要書類の入手
③初診日の証明
⇓ 1,初診日の証明書類(受診状況等証明書)の準備
④診断書の依頼
⇓ 1,医師に診断書の依頼
⑤申立書の作成
⇓ 1,病歴・就労状況等申立書の作成
⑥その他の書類の準備
⇓ 1,添付書類の準備
⑦年金事務所に提出
1,書類一式を提出
詳しく、①事前準備から順にご説明します。
①-1 障害年金の事前準備<病歴・治療歴の整理>
まずは初診日の記憶をたどります。
診察券、お薬手帳、健診の結果、メール、日記、親しいお友達等にLINEで相談した、家族に聞くなどあらゆる角度から手がかりをつかみ確認します。
メモ程度で結構ですので、時系列がわかるように古いものから順に紙に書き出すか、パソコンで作成してみてください。
パソコンで作成すると、「病歴・就労状況等申立書」に転記しやすいですのでお勧めです。
箇条書きで結構ですので、いつ、どの病院で、どんな診断をされ、どのような治療をしたか、どれくらいのペースで受診したか、を書き出してください。
同時に起こったエピソードも書いてください
年金事務所に提出する書類は和暦ですので、和暦で書いておくと、書類作成時にスムーズです。
【メモ内容】
・日付(和暦)
・病院名
・診断名
・治療方法
・受診頻度
・その時起こったエピソード
例1) 精神の障害 うつ病の場合
H28年○月頃 〇〇市のAメンタルクリニック 勤務先の近く
仕事の長時間労働が続く 仕事のミスが増える 上司からの執拗な叱責を受ける
食欲がない、夜眠れない、強い不安感、慢性的な疲労感のために受診
うつ病と診断
抗うつ剤、抗不安剤、導眠剤の薬物療法
月1回程度受診
H29年○月頃 ○○市のBメンタルクリニックに転院 自宅近く
上司との関係が悪くなり 出社拒否が続く、有給を使い切り退職
無気力、不眠、極度の疲労 退職後は母親の死を経験し、家に引きこもる日々
抗うつ剤、抗不安剤、導眠剤の薬物療法
月1回程度受診
例2) 腎臓の障害 慢性腎不全の場合
R2年○月頃 〇〇市のAクリニック 泌尿器科
食欲がなく、疲れやすい、夜中にトイレに行く回数が増え、血尿があり受診
検査し、腎炎の疑いと診断
薬物療法、食事療法の治療開始 月1回程度受診
R3年○月頃 ○○市のB医療センターに転院 Aクリニックの紹介
顔や手足のむくみがひどくなり、B医療センターで検査
慢性腎不全と診断、入院、人口透析を始める(入院期間:H28年○月~H29年○月)
外来で人工透析を継続 (週3回 1日4時間程度)

このようにメモでまとめておくと、どのような経緯で病気になり病院でどんな診断、治療をされ今に至っているのかが整理されます。
請求書類の中でも重要な「病歴・就労状況等申立書」の下書きにもなります。
①-2 障害年金の事前準備<初診日の確認>
・初診日の確認
初診日がいつなのか確認します。初診日は必ずしも診断名がついた日ではありません
「初診日」とは障害の原因となった病気やケガについて初めて診療を受けた日です。
初診日は、障害年金の請求にとって非常に大事な日になります。
初診日は障害年金受給のための3要件の基準になるからです。
不確定な場合は、必ず社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。
【初診日確認のための項目】
・現在の病名は?
⇓
・その病気で、最初に体調が悪くなり、病院に行ったのはいつ頃ですか?
⇓
・お薬手帳や、日記、親しいお友達等にLINEで相談したなど具体的な日付がわかる方法は?
⇓
何年の何月何日にどの病院に行きましたか?
①-3 障害年金の事前準備<医師への相談>
障害年金の請求するための最も重要な書類「診断書」の作成を医師に頼むにあたって、事前に主治医に障害年金の申請のご相談をされるとよいです。
主治医に障害年金の請求を考えています、と一言お伺いをし、診断書の作成をお願いしたいと思っています、とお伝えしてください。
診断書の作成は先生にとって、とてもお時間の有することで、診察でお忙しいなか診断書を作成するのはかなりのご負担です。
病院の比較的すいている時を見計らって、相談してみてください。
病気によっては診断書に測定数値や検査結果を記載する欄があります。
新たに検査、測定が必要になることもあるので、事前に主治医には障害年金のご相談をしてください。
②-1 年金事務所に相談<納付要件の確認>
初診日の見当がつきましたら、年金の加入歴・保険料の納付状況を確認します。
初診日にどの年金制度に加入していたかによって相談先が異なります。
〇障害年金の相談先・申請先
・初診日に国民年金(自営業の方)→原則住所地の市区町村役場
年金事務所、街角の年金相談センターでも可
・初診日に厚生年金、国民年金の3号被保険者(会社員・会社員の妻)→年金事務所、街角の年金相談センター
・初診日に共済年金(公務員)→原則加入していた共済組合
街角の年金相談センターとはあまり聞きなれないかと思いますが、全国社会保険労務士連合会が運営している相談センターです。無料で相談、書類の受付まで対応してくれます。
年金事務所に行くときは事前に電話予約をしてから行きましょう。
予約なしですと混んでいた場合、当日相談できない場合がありますので予約するのが確実です。
電話予約の時には年金番号を聞かれますので、事前に用意しておいてください。年金番号が分からないときはその旨伝えてください。

初診日がまだ確定していない時は年金事務所に相談に行った際、初診日の具体的な日にちは言わないでください。全ての年金事務所で見れるパソコンに履歴が残りますので、注意が必要です。
〇年金相談に行く際の持ち物
・マイナンバーカードまたは基礎年金番号が確認できるもの コピー可
マイナンバーカード、年金手帳、年金証書、基礎年金番号通知書など
・本人確認書類 コピー可
マイナンバーカード、パスポート、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳など
*家族など本人以外が相談に行く場合はさらに委任状が必要です。(ホームページよりダウンロードできます)
障害年金受給の3要件の1つである保険料納付要件は、年金保険料を納めた日が最重要です。
初診日の後に納付した分はカウントされません。
保険料の納付状況は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でも確認はできますが、実際の納付日を確認することができるのは窓口だけです。
加入歴・納付記録はプリントアウトしてもらってください。
初診日の候補日がいくつかある場合には、それぞれの初診日について保険料納付要件を確認すると二度手間になりませんのでお勧めします。
②-2年金事務所に相談<必要書類の入手>
保険料の納付要件が確認できましたら、障害年金を請求するために必要な書類を頂きます。
準備する書類は個人によって異なりますので、窓口で相談しながら必要な書類を頂いてください。
必要な書類は年金機構のホームページからもダウンロードできます。
入力してプリントアウトするのでしたら、書類自体は不要ですが必要な書類名だけは聞いてください。
診断書は8種類あります
〇診断書の種類
・眼の障害用(様式120号の1)
・聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下機能・言語機能の障害用(様式120号の2)
・肢体の障害用(様式120号の3)
・精神の障害用(様式120号の4)
・呼吸器疾患の障害用(様式120号の5)
・循環器疾患の障害用(様式120号の6-(1))
・腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用(様式120号の6-(2))
・血液・造血器・その他の障害用(様式120号の7)
診断書は障害がどこにあるかによって異なり、病気やケガの症状を一番適切に伝えられる診断書を選びます。
③-1 初診日の証明<初診日の証明書類(受診状況等証明書)の準備>
初診日を証明する書類を準備しましょう。書類名は「受診状況等証明書」です。
最初に受診した病院に受診状況等証明書の作成を依頼します。
障害年金を請求するのに1番重要なのは初診日です。その初診日を証明してもらうための書類です。
*「初診日」とは障害の原因となった病気やケガについて初めて診療を受けた日です。
あいまいな記憶で思っていた初診日が違っていた場合は、いくつもの病院に受診状況等証明書の作成を依頼することになります。
初診日がはるか昔だったり、頻繁に転医してきた方は初診日がわかりづらいことがあります。
受診状況等証明書を作成するための費用や時間もかかります。
診察券、お薬手帳、日記、親しい方とのやりとりのLINEなど、あらゆる手で記憶をたどって、的確に最初に受診した病院に受診状況等証明書の作成を依頼しましょう。
〇受診状況等証明書をもらう手順
1,ここだと思う最初に受診した病院にまず依頼します。
⇓
2,前医の記載があるかないかチェック
作成いただいた受診状況等証明書を確認します。
⑤発病から初診までの経過
前医からの紹介状はありますか⇒ 有 無 (有の場合はコピーの添付をお願いします)
無に〇がついているか確認ください
有に〇がついている場合は前の病院の受診状況等証明書を取ります。無に〇がつくまで取り続けます。
受診状況等証明書が提出する必要のない場合があります。
〇受診状況等証明書が不要のケース
・一度も転院していない
診断書に初診日等を記載する欄があり、受診状況等証明書で初診日を証明する必要はありません。
ただし、大きな病院で診療科が途中で変わった場合は最初の診療科で受診状況等証明書をもらう必要があります
・知的障害で請求する場合
生まれながらの知的障害の初診日は、生まれた日となりますので不要です。
④-1診断書の依頼<医師に診断書の依頼>
診断書は障害年金受給のための一番重要な書類です。
診断書の内容によって、障害年金を受給できるか否か、そして何級になるのかを決定すると言われています。
いつの時点の診断書が必要なのでしょうか。
初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日といい、医師にその頃の症状を診断書に記入してもらいます。
A3の診断書は全て医師が記入します。
診断書には障害によって、就労や日常生活にどのような困りごとがあるのかを記入する欄があり、障害年金受給のための重要な判断基準になります。
短い診察の間で、自分の日常生活の困りごとや、就労の状況などなかなか医師にお話しするのは困難ではないでしょうか。
口頭で伝えるのが難しいようでしたら、メモに書いて医師にお伝えください。
〇診断書作成にあたって医師に伝えるべき内容
・いつどような症状があるか
・毎日どのように生活しているか
・障害によって日常生活で困っていること
・就労の状況 就労の有無、
就労している場合はどのような働き方をしているか、頻度、内容、勤続年数など
・仕事をする上で障害によってどんな困りごとがあるか
医師に伝えるべき内容をご自分でお伝えするのが困難な方は、ぜひ信頼のおける社会保険労務士を頼ってください。
障害年金が受給できるかどうかは診断書の内容がほぼ決定づけると言われている重要な書類です。

当事務所では医師に伝えるべき内容を具体的にお客様よりヒアリングし、的確に書面にまとめ医師にお伝えします。
⑤-1 申立書の作成<病歴・就労状況等申立書の作成>
病歴・就労状況等申立書は自分の言葉で書くことがができる唯一の書類です。
作成するのは自分や家族、代理人が作成します。
あれもこれもと、たくさんのことを書きたくなると思いますが、読み手に伝わるよう端的に書きましょう。
スペースが限られているので、簡潔に箇条書きでよいので、分かりやすく書きましょう。
書く内容は「病歴」・「就労状況」・「日常生活状況」です。
発病から現在まで時系列で3~5年ごとに期間を開けずに状況を記入します。
転医があれば枠を区切り、その理由を書きます。
病院に行っていない期間があれば枠を区切り、その理由や症状を書きます
日常生活と就労の状況は病歴に合わせて書きます。
〇病歴
・病院名
・診療科名
・通院の頻度
・入院期間
・治療の内容
・薬の内容
〇病歴・就労状況等申立書の作成時の注意点
・知的障害、発達障害、先天性疾患は出生時から記入します
・何に困っていて、何が出来ずに不自由なのかを端的に書きます。
・受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書の3枚の内容が合っているか注意します。
・通院していなかった期間や転医についても間を開けずに記入します。
⑥-1その他の書類の準備<添付書類の準備>
受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書が揃いましたら、その他添付する書類を取り寄せたり、作成をします。
その他の必要な書類は人それぞれ異なりますので、年金事務所に問い合わせて確認してください。
すべての方が必要な書類
書類名 | 確認事項 |
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基礎年金番号通知書または年金手帳等 | 加入期間の確認のため |
戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか | ご本人の生年月日を明らかにできる書類 単身者の方で、日本年金機構にマイナンバーが登録されている方は、原則不要となります。マイナンバーが登録されていない方は、年金請求書にマイナンバーを記入することで、左記の戸籍謄本等の添付が原則不要となります。 |
医師の診断書(所定の様式あり) | 障害認定日より3カ月以内の現症のもの。 障害認定日と年金請求日が1年以上離れている場合は、直近の診断書(年金請求日前3カ月以内の現症のもの)も併せて必要となります。 また、診断書に併せて、レントゲンフィルムや心電図のコピーの提出が必要な場合があります。 |
受診状況等証明書 | 初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため |
病歴・就労状況等申立書 | 障害状態を確認するための補足資料 |
受取先金融機関の通帳等 (本人名義) | コピー可 |
18歳到達年度末までのお子様(20歳未満で障害の状態にあるお子様を含む)がいる方
書類名 | 確認事項 |
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戸籍謄本 (記載事項証明書) | 子について、請求者との続柄および氏名・生年月日確認のため |
世帯全員の住民票の写し(マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 請求者との生計維持関係を確認するため |
子の収入が確認できる書類(マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 生計維持関係確認のため 義務教育終了前は不要 高等学校等在学中の場合は在学証明書または学生証のコピー 等 |
医師または歯科医師の診断書※ | 1級または2級の障害の状態にあることを確認するため |
※20歳未満で障害の状態にあるお子様がいる方は必要となります
その他 ご本人の状況によって必要な書類
書類名 | 確認事項 |
---|---|
請求者本人の所得証明書(マイナンバーをご記入いただくことで、添付を省略できます。) | 20歳前障害の場合に本人の収入を確認するため |
年金加入期間確認通知書 | 共済組合に加入されていた期間がある方 |
年金証書 | 他の公的年金から年金を受けているとき(配偶者を含む) |
身体障害者手帳・療育手帳 | 障害状態を確認するための補足資料 |
合算対象期間が確認できる書類 | 詳細は下記を参照してください |
参照:日本年金機構
⑦-1年金事務所に提出<書類一式を提出>
書類がそろいましたら、年金事務所に提出します。
窓口で提出の場合はその場で受付印の押された受付控えを頂きます。
郵送の場合は、個人情報が書かれた書類一式なので、確実に年金事務所に届けられたことを履歴で追える発送方法が良いです。
後日、年金事務所より受付印を押されたものが返送されます。
事後重症請求の場合は受付印が押された月から受給の対象になります。
ですので、月末提出とその翌月の提出ですと、翌月の提出のほうが1か月分の年金が少なくなります。
例えば、5/31に提出する場合と6/1に提出する場合は、6/1に提出する場合の方が1か月分の年金が少なくなります。
提出する書類は必ずコピーを取って保管しておいてください。
〇書類提出から決定までの流れ
請求
⇓ ・書類をそろえて提出
年金事務所窓口
⇓ ・書類の不備がないか確認され、書類に不備があれば訂正や加筆後、再提出
⇓ ・不足の書類があれば用意し提出
審査
⇓ ・3か月ほどかかります
決定
・受給決定の場合「年金証書」が届きます
・受給決定ではない場合「不支給決定」「却下」の通知が届きます
まとめ
事前の準備から提出まで、かなりのボリュームがあると思われたかと思います。
しかし、障害年金を受給するためには、慎重に細部に気をつけながら、進めていく必要があります。
ご自分で請求される場合は、一つ一つ確認しながら進めてください。
1人で書類を揃えたり書類の作成をするのが大変、初診日がわからないなどありましたら、ぜひ信頼のおける社会保険労務士にご相談ください。
ご自分1人で進めていくより心強いですし、何よりもご病気や日常生活のご負担にならないように、プロの手を借りるのもよいかと思います。
申請が1か月遅れると、1か月分もらえるはずだった年金がもらえないのです。手数料をお支払いしても、安心して任せられるのでしたら、早めに依頼するのも手ではないでしょうか。
